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キム・イングォン「イ・ギョンギュ、降板を予想した僕にギャラを全部くれた」
俳優キム・イングォンがさまよう魂で帰ってきた。大韓民国の最長寿歌謡コンテスト番組であるKBS1TV『全国のど自慢』を素材にした映画『全国のど自慢』で、キム・イングォンは若い時に歌手を夢見たものの、今はたいした稼ぎもなく妻のご機嫌を窺いながら生きる主人公ボンナムを演じた。

興行成績に浮き沈みはあるものの、キム・イングォンは毎回作品の中の人物になりきって観客を泣かせ、また笑わせてきた俳優だ。それは『全国のど自慢』でも同じだった。歌手の道を諦め無力化した一家の主が、金海市を訪れた「全国のど自慢」を願ってもない機会だと思った過程は、我々の誰にでもある夢に対する郷愁を深く呼び起こさせる。

26日、ソウル市東橋洞にあるカフェでキム・イングォンと会見した。例の気さくで淡白な言葉使いの中にもしっかりとした重心が感じられた彼との対話は、いつものように愉快で温かかった。「僕は歌手ではなく俳優ですが、ボンナムを演じながら自分の人生もたくさん入れました。そこに制作者のイ・ギョンギュ代表の人生も加えました。映画の仕事をしたいと思っている熱望が、劇中で歌手になりたいと思っているボンナムの気持ちと似ていると思いました。『全国のど自慢』はイ・ギョンギュ代表の3番目の映画ですが、観客は映画の外的な部分でのみイ・ギョンギュを思い浮かべるようでした。どうすれば映画の中にイ・ギョンギュという人物を取り入れることが出来るか悩みました。ボンナムが芸能人のように振舞えたのもそのおかげですよ」

キム・イングォンがこれまで隠してきたダンスや歌の実力は、映画を見る観客が再び視線を奪われるほどだ。歌手を夢見た人物ボンナムを演じるため、彼は映画『覆面ダルホ』の時に歌とダンスを教えていた専門家を訪れ“血のにじむような努力”をした。そのおかげでキム・イングォンは一層しなやかな動きでスクリーンで舞うのに成功した。特にボンナムがアパートの廊下の奥から玄関先までダンスを踊りながら歩いてくるシーンが圧巻だ。

「高校の時に踊っていたダンスは自分勝手なダンスでした。ナミやソ・テジを真似たダンスです。それ以外にダンスを勉強したことはないんですが、いい先生に出会いました。歌も同じです。廊下を踊りながら歩いてくるシーンは撮影しながらも満足でした。でもすごく大変でしたよ。一日中そのダンスを練習したんですが、いざ撮影を始めるとダンスが出来ないんです。なめらかに動作をつなぐのが易しくありませんでした。重いステディカムを持ったスタッフが汗をぼろぼろ流しながら撮っているんです。これ以上苦労させたくない気持ちでもどかしかったですよ。足の動作がやたらともつれてしまって満足ではなかったんですが、胸までしか写していないので上手く映っていると思います(笑)」

何回も登場するダンス以外に、キム・イングォンが友人ジョンデ(キム・ジュンギ)にトロット『ファン・ジニ』を教えるシーンも圧巻だといえる。歌唱力が“全くない”ジョンデは、中華料理屋チャチャルを宣伝するためにのど自慢大会の予選で『ファン・ジニ』を歌うことにし、ボンナムは彼のために一小節一小節ポイントをつかんで歌を教える。バイブレーションから歌詞の微妙な発音、歌の強弱まで全て集約したレッスンだった。キム・イングォンは「そのシーンでは僕のアドリブがたくさん入っている」とし「映画『覆面ダルホ』の『二次船足』を作詞作曲したキム・ミンジン先生に習った」と笑いながら話した。

この日キム・イングォンは『全国のど自慢』の完成版を初めて観覧した感想を「主演ではあるが、自分があまり出ていないので映画を楽に見ることが出来た」と述べた。前作で主演作だった『救国の鋼鉄隊列』が興行に失敗した後、内心不安だったという本音を表したようなものだった。『海雲台』と『光海、王になった男』で2本とも観客1千万人映画とした彼だが、「主演としてはだめだ」という評価を得ることはプレッシャーとなる事だった。キム・イングォンは『全国のど自慢』の制作者イ・ギョンギュに対し、特に有難がっているのもそんな理由からだった。
「『救国の鋼鉄隊列』は序盤に興行があまり上手くいかないだろうということがはっきり分かった状況でした。実際俳優が最も“クラス”が上がった時にキャスティングしようとするのが、普通の制作者の気持ちじゃないですか。それだけに『全国のど自慢』のギャラが議論された時は「すごく削られるだろう。俳優が変わるかもしれない」と思いました。『バンガ?パンガ!』が上手くいってシナリオがたくさん入ってきたんですが、『救国の鋼鉄隊列』がこんなんだったら作品が途絶えてしまうとも思いました。でも降板どころか『全国のど自慢』のギャラをそのままくれたんです」

広く知られている通り、イ・ギョンギュは映画に対する格別な愛情で映画界に飛び込んだ人物だ。映画の現場では彼はトップコメディアンではなく、映画を撮って作りたい制作者イ・ギョンギュだ。そんな彼の励ましは興行の失敗後、降板まで予想したキム・イングォンにとって大きな力となった。「イ・ギョンギュ代表が「上手くいったらいいが、だめでもいい」とおっしゃったんです。それだけやり手でもあるんです。SBS『ヒーリングキャンプ』に僕を出演させられたのもそうですし。実際『救国の鋼鉄隊列』以降、主流ではシナリオが入ってこなかったんですが、マネージャーによると『ヒーリングキャンプ』と『全国のど自慢』の試写会の反応が良かったというので、じわりじわりと作品のオファーが来ているそうです(笑)」

『救国の鋼鉄隊列』以降を話しながら「作品が途絶えると思った」と言ったキム・イングォンに「興行の成績に一喜一憂するようには見えない」と返してみた。すると「主人公の時は違う」という答えが返ってきた。今度は『マイウェイ』について尋ねてみた。残念ながら酷評された映画だったが、“キム・イングォンの再発見”という反応だけはしっかりあった作品だった。

「『バンガ?パンガ!』の時はむしろ、僕が主演でも好評を得ることが出来るんだと力を得ましたが、『救国の鋼鉄隊列』は良い映画だったのにもかかわらず観客の好反応を得られなかったじゃないですか。そうなると俳優の広報内ではプレッシャーが生じるんです。「キム・イングォンは主演で使うと観客の好評を得られない」という話が出るのではと。映画に対する評価があまり良くないのに僕だけが良い評価を得る時は申し訳ないです。映画のためのものではなく、自分の中で終わったということだから、一生反省することなんです」

多くの俳優が重心を分け合っているが、『全国のど自慢』がキム・イングォンの好演でさらに輝きが増すことだけは事実だ。もう後は観客の好評だけが残った。「この映画に3千万人の観客が入ってくれたらと思う」と笑う彼からは、主演俳優の並々ならぬ責任感と胸のはやりが同時に感じられた。