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『カート』のヨム・ジョンア「女優の見えない戦い?皆が武装解除」
女優ヨム・ジョンアの演技人生はまっすぐだ。デビュー後いち早く青春スターの座を掴んだ彼女は、浮き沈みなく演技歩行を続けてきた。目立つ都会的な美貌とりんとした重みのある声は、彼女だけの独特な演技トーンを完成させた。

しかしヨム・ジョンアは一つのイメージに閉じ込められなかった。華やかでセクシーなファムファタールから全く本心が分からないミステリアスな女性、天然溢れるコミカルなヒロインまで、変身のスペクトラムも広かった。

13日に公開された映画『カート』の中のヨム・ジョンアの姿は、以前のどの作品よりも強烈だった。映画は大型マートの非正規職員らが不当解雇され、これに立ち向かって起こる話を描いている。韓国産業映画の歴史上、初めて非正規職の女性労働者の闘争を中心素材にした。ヨム・ジョンアはマートの模範職員だったが職場を失う危機に直面し、ストに飛び込むソンヒ役を演じた。

高い背と小さな顔、はっきりとした目鼻立ちが与える洗練された印象も、ヨム・ジョンアがソンヒという人物に入り込むのに妨害にはならなかった。二人の子を一人で育て、生計の前線で戦わなければならなかったソンヒ役のため、ヨム・ジョンアは顔に直にシミを描いた。ヨム・ジョンアは「私がソンヒに見えなければどうしようかとすごく心配したが、今は全ての心配を下した」と打ち明けた。


「毎回そうですが、自分が出演した作品を観客的に見るのは難しいです。「なんであんな風に演じたのかな?」っていう無念さがすごく残るからです。最初は自分の演技だけ見て、後になってやっと映画全体が目に入ってきます。自分の演技に短所が多いと思いながらも、思っていた所では間違いなく涙が出るんです」

「ソンヒ役をこなせるだろうか」という彼女の心配は取り越し苦労となった。ソンヒは女優ヨム・ジョンアの体を通じ完成された。誰よりも模範的だった、静かで優しい職員ソンヒの顔には次第に闘争の中心に飛び込む女の決起がにじんでいった。全く多くの言葉を吐き出さなかったソンヒが初めて組合員たちが置かれた状況を知らせるために人前に立つシーンは、観客の間で憤怒と不憫さを込めて取りざたされたシーンでもあった。

「普段のソンヒはたぶん、言いたいことがあまりない人だったと思います。与えられたとおりにただ一生懸命生きて子供たちを育てること、それだけが人生だった人なのに、正規職になれるという膨らんだ夢を見ていた時に解雇されたんです。ソンヒが受けた喪失感と惨めさはものすごかったと思います。マートで強引に連れて行かれるシーンは、ソンヒが初めて勇気を出して自分の声を出すシーンでもあったので、多くの方が記憶されているようです」

その他にヨム・ジョンアに強烈な記憶として残っているシーンはまだある。解雇を通知され家に帰ってきたソンヒが、一人ごみ袋を結ぶシーンだ。修学旅行の話をする息子テヨン(ト・ギョンス)の前でこれ以上言うことのなくなったソンヒは、詰まった胸でゴミ袋を結ぶ。凄絶な状況でソンヒが出来る事といえば、これまでのように袋にゴミをいっぱいに入れてしっかり巻きつけることだけだ。

「ゴミ袋を結びながら一人泣くシーンは、序盤に撮影したにもかかわらず非常によく没頭できました。その日の朝まで子供たちに「携帯を変えてあげる」って言って出勤していたのに、解雇された状況じゃないですか。修学旅行に子供を行かせられなくなった状況でもありますし。その全ての現実がものすごい荷物に感じられたソンヒの感情が、映画を見ながらも思い浮かびました」
映画がマートの女職員たちの話を描いただけに、『カート』にはそうそうたる女優が大挙出演している。ドラマや映画を行き来しながら活発な活躍を続けてきたムン・ジョンヒをはじめ、『弁護人』『私たちは兄弟です』『めまい』『カート』など休む暇なくスクリーンを駆けずり回るキム・ヨンエ、『ハン・ゴンジュ』で韓国映画界のブルーチップとして浮上したチョン・ウヒなど、名前だけでも注目される出演陣を誇る。

“気の強い集団”として誤解されもする女優らが一つになったのだから、鋭い神経戦が繰り広げられたのではないだろうか。ヨム・ジョンアは「全く」と迷いなく答えた。彼女は「劇中互いに団結しなければならない状況が、関係にも影響を及ぼしたようだ」とし「皆が銭湯に一緒に来た人たちのように武装解除し、一人一人が実際の組合員のように団結することが出来た」と振り返った。

『カート』を通じスクリーンにデビューしたアイドルグループEXOのメンバート・ギョンスは、今回の映画でヨム・ジョンアと母子の息を合わせた。10月に第19回釜山国際映画祭で『カート』が初公開されて以降、ト・ギョンスの演技に対する好評も注がれている。SBSドラマ『大丈夫、愛さ』の撮影以前に行われていた『カート』の作業でも、彼は新人らしからぬ滑らかな演技を繰り広げた。ヨム・ジョンアも共演したト・ギョンスの称賛を忘れなかった。

「演技しながら、テヨンがまるで自分の息子みたいでした。ト・ギョンスは演技が上手でした。私はもしかしたら緊張するのではとすごく気楽に接しました。でも「演技をこんな風にしろ、あんなふうにしろ」とは言いませんでした。最初は私に怖かったと言っていましたが、そうだったようには見えません。落ち着いている人なんですよ」

『カート』のエンディングは、タイトルと合致するシーンで終了する。カートは劇の背景であるマートを象徴すると同時に、戦いに乗り出した組合員たちの闘争手段を意味しもする。ヨム・ジョンアは「エンディングはシナリオ通りだった」とし「なぜ争いを解消してくれないのか」と感じるかもしれないが、プ・ジヨン監督の説明通りこの話は現在進行中の事件を代弁してもいる」と伝えた。

「この映画を作業しながら知らなかったことまで知り、驚きました。非正規職がこんなに多いとは思わなかったし、女性労働者だから当面する不当な事がこんなに多いとも知りませんでした。近くにいそうな周りの人たちが直接当面している事だなんて、驚くほかありませんでした。他人事だと思っていたのに、自分の近くで見ていた人たちの話だったからです」